マラーク その3


自分の覚え書きとして残しておきたいこともあって、
今回はさらに、とてつもなく長いです。
タイトルはマラークですが、今回の内容は
ほとんどが、ダマーニがマラークを産んだ時のお話。



というわけで、マラークの赤ちゃんが何事もなく
無事に生まれることを切に願っていたんですが、
予定よりも1週間も早い8月21日朝、
陣痛が始まっているマラークをみつけます。
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マラーク自身が生まれた時も早産で
その後しばし大変だったこと、
ダマーニの5番目の仔、ヌールが早産未熟児で
1日半の命だったことなどを思い出し、
朝、陣痛が始まっているマラークを見た時は、
もう、「うわわわわわ~」と、めまいする思いでした。


赤ちゃんは、ヌールのことがあったので、
もし未熟でおっぱいが飲めないとしたら、
今回は迷いなく手を出して、人口哺乳を試みると
決めていました。
でも、赤ちゃんが未熟で生まれると、仔だけでなく
お母さんにもリスクが生まれます。


それはマラークが生まれた時に学びました。

マラークはやはりやや早産で小さめに産まれましたが、
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幸い立つことができ、
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時間はかかりましたがおっぱいを
自分で飲むこともできました。
が、その後ダマーニに問題が起こります。

お産後何時間か経つと胎盤が出てくるはずなんですが、
とっくに出ていい時間になっても出てこない。
胎盤が出ないと子宮はなかなか元に戻ることができず、
出血がどんどん増えてしまいます。
これは人間にも起こりうることで、時にはお母さんの
命も脅かす怖いこと。



***余談になりますが、胎盤の話を少し***

人間も同様ですが、子宮にくっついて栄養等々の橋渡しをして
赤ちゃんの命を支えていた胎盤は、赤ちゃんが生まれた後は
もう用無しの不要物。子宮から外に出さなければなりません。

胎盤を出すため、あかちゃんが生まれた後も
子宮は陣痛のように収縮を続け、胎盤を子宮からはがします。
動物はわかりませんが、人間の場合、胎盤が出た後もしばらく
そうしてギュッと子宮が収縮することで、
胎盤がはがれたところの出血も自然に止まっていくように
なっています。

はがれてしまえば、外に出ることはそう大変なことではありません。
怖いのは、はがれないこと。はがれずにいつまでもくっついていると
子宮がちゃんと元にもどれず、出血が止まりません。
問題なのは出血だけではありません。
もう不要となったものが中にはいったままなので、子宮は元に
戻ることができず、中にばい菌が入りやすくなります。
残った胎盤も腐っていき感染などを起こして命にかかわります。

ちなみに「胎盤が残る」状態は2つあります。
全部がくっついて残ってしまう場合と、胎盤が切れてしまい
一部がくっついて残ってしまう場合。
どちらもリスクがあることに変わりありません。
そのため、人間の場合病院等では胎盤が出るとかならず
きれいに全て出たか形を確認します。

自然のすごいところは、お産後、お母さんの体自身ももちろん
その胎盤を外に出す力を持っていますが、
人間の場合がそうなのでおそらく動物もそうではないかと思うのですが、
おっぱいを吸われると、その刺激で子宮が陣痛のように
ギュッと収縮するようにできています。

つまり、赤ちゃんが元気におっぱいを吸ってくれると、
子宮はギューギュー収縮し、胎盤もグイグイ押し出され、
出血も減っていく・・というわけです。

(おまけ)
サーメル一家において記録的な速さでおっぱいを
力強く吸い始めた超成熟児サハーバのお産は、
これまた胎盤も綺麗に出て出血も少なく
とてもスムーズでした。
こちらは、サハーバを産んだ後胎盤を食べて
片付けるダマーニ。
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*** *** ***


ダマーニのお産の話に戻りますが、
マラークは、おっぱいの吸い始めが遅く、
吸ってもそれほど長くなく、その後もよく寝る仔だったので
頻繁に積極的におっぱいを吸うようになるまで
他の仔に比べちょっと時間がかかりました。
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<もう眠すぎて、足がどうなってもおかまいなし>
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そのせいかどうかはわかりませんが、
マラークが産まれて12時間経過しても胎盤は端の方が
ちらりと外にでるだけでツルンと出てこない。
そのため、何度も何度もふんばって
ちょっとだけ出てきたその端を口で引っ張り出そうと、
座って必死に体を曲げて口を近づけるダマーニ。
時々うとうとしてほとほと疲れている様子。

そこで、私が余計なことをしました。出ていた端が
もうあとちょっとで口が届くところだったので、
それをダマーニの口元に持っていったのです。
ダマーニは、その端をつかんでぐいぐい胎盤をひっぱり
出てきた胎盤を端から食べていきました。

一見これで解決したように見えますが、実は大変なのは
これからでした。

私が途中で余計な手出しをしたため、まだ完全に
剥がれきっていなかった胎盤をダマーニがひっぱることに
なってしまったようで、一部が剥がれきらずに
残ってしまいました。
そのため出血がいつまでもだらだらと続きます。
出血と、胎盤を出すのに時間がかかったことで体力を
消耗していたダマーニは、一番心配していた
「ばい菌の感染」をおこしたらしく、
お産して2日目の朝、熱を出してご飯を食べなくなりました。
草食動物がご飯をまったく食べないというのは
専門的な知識のない私でも、相当シビアなことだと
わかります。顔つきも明らかにおかしい。


それまで、若干未熟であまり積極的におっぱいを飲みにこない
マラークのことを、他に何も見えないんじゃないかと思うほど
夢中で世話していたダマーニですが、
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とりあえずマラークがそばに来ればおっぱいはあげるものの、
動いているマラークをボーっと見ることが多くなり
積極的に育児をしなくなりました。

しばらくして、ついにマラークのことを考える余裕がなくなり、
マラークがお腹を空かせてモソモソ動き出しても
普段のダマーニであれば、すぐ走っていくはずなのに
ボーっと見つめたまま動きません。

<起きたマラークをそばに連れていってみるけれど、
本来であればこの時期隣同士で座ることなどなく、
すぐ立ち上がって赤ちゃんの世話をするダマーニが、
マラークをまったく見ようとせず>
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<しばらくしてからボーっと匂いをかぎ、>
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<ようやくなんだか覇気のない顔で立ち上がって>
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<おっぱいをあげる>
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そのうち、ダマーニはいつもの居住場所から離れ、
砂漠の遊び広場の方へ移動、隠れるように
隅のほうで座り込んでしまいます。

マラークはおっぱいを吸い始めれば吸えるのですが、
マラークの目が覚めてもダマーニが起き上がらず、
近くに連れて行っても、まだ強引におっぱいを飲む術を
知らないマラークは、しばらくダマーニの周りをうろうろし、
あきらめて去ってまた寝てしまいます。

こんなことを続けたら、ただでさえ小さ目のマラークが
どんどん体力をなくしてしまうし、さらにおっぱいが吸えなくなれば
子宮の収縮に時間がかかって出血が増えるという悪循環になる・・と思い、
マラークが起きるたびにダマーニのところに連れて行き、
起き上がらないダマーニのお尻を押したり、
おっぱいを触ってみたりして立たせ、マラークにおっぱいを
吸ってもらうようにしました。

他に私ができることといったら、ダマーニが遠くまで行かなくても
食べられる時が来たらすぐに食べられるように、
好物と栄養価の高いものをすぐそばにおいておく事。
もうそれくらいしかありません。

その日は砂の上に毛布を引いて
ダマーニとマラークと、様子がおかしいと思うのか
ちょっと離れたところにいるお姉ちゃんになったハディーヤと
外で一晩過ごしました。
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ちなみに、この日ほとんど写真を撮っていません。
出血が続き、ぐったり寝ているダマーニを見ていたら
もしかしたらダマーニはもたないんじゃないかと怖くなり
写真を撮ることができなかった私。


マラークが起きたら近くに連れて行きダマーニを起こすー
それを何回か繰り返していたんですが、おっぱいをあげると
すぐ座り込んでしまっていたダマーニが、夜になってようやく
そばに置いておいたダマーニの好きな葉っぱを少し
つまんで食べました。



ずいぶん長いことそういう時間を過ごしたような気がしましたが、
こうして振り返ってみるとダマーニが熱を出してから
たった1日後になりますが、夜が明ける頃、日が差してきた気配で
目が覚めると、近くにいたはずのダマーニがいず、
慌てて見回したら、少しはなれたところで草を食べていて、
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その後反芻する様子もみられ、もしかしたらダメということも
考えておかなければならないかも・・と覚悟していただけに、
この時、胸がつまるくらい嬉しかったのを覚えています。
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その後起きてきたマラークを連れて行くと、
今までとは足のふんばりが変わり、
それまでで一番長く力強くおっぱいを吸いました。
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そこからものごとが順調に転び始めます。

マラークのおっぱいを吸う力はどんどん強くなり、
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ダマーニも積極的にマラークの世話をするようになり、
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その日は何度か私がマラークをダマーニの
ところまで連れて行きましたが、
次の日には長々寝ているマラークをダマーニが起こしに行き
おっぱいを飲ませるようになり、
マラークもさらに力強く吸えるようになって、
そのせいか、子宮の中に残ってしまってたものが
少しずつ出はじめました。出血もぐんぐん減って
お産後6日目には止まり、ダマーニの顔つきもよくなって
お産後11日目、ようやく最後(と思われる)に残っていた物が出て
普段のダマーニに戻りました。

<回復中、しょぼしょぼした顔でデイツを食べるダマーニ>
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野生動物ガゼルという特質上、病院や医師がなかなか見つからず、
手術などの治療もとても難しく、サーメルのように
人馴れしていないので、捕まえて診察や治療ということが困難です。
その為、万が一何かあった時、彼ら自身の力を信じる以外ほとんど
手がありません。ダマーニとマラークがこの時を乗り越えられたのは
本当に幸運でした。


*** *** ***

そんなことがあったので、マラークが予定日よりもずっと早く
陣痛が始まった時は、
「もしかしたら予定日の計算間違えたかも・・、もしかしたら
人間みたいに予定日前に偽陣痛があるのかも・・」などと
現実逃避したい思いだったんですが、
どうみても本格的に陣痛のあるようすだし、

<陣痛の合間の特有の伸び>
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マラークのお腹もおっぱいも小さく、予定よりも早いお産で
仔は小さいに違いなく、
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母仔ともどうか無事でありますようにと
緊張した夜を過ごすことになりました。



そしてお産になり、案の定生まれた赤ちゃんアマールは、
小さくてなんだか弱弱しく、まさにマラークが産まれた時を
思わせるよく寝る仔。
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でも、マラークは割りとまめに赤ちゃんを気にして
世話をし、おっぱいを吸わせる様子も見られたので
安心していたんですが、
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<アマールを守るため、視界に入るチョビチョビを
追い掛け回して遠くへ追い払うマラーク。すっかり母>
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時間がかなり経ったというのに、胎盤が出てこない。
けっこう出血しているのも見られ、お産して12時間以上経った頃から、
それまで赤ちゃんのことをまめに気にして育児していたマラークが
なんだか落ち着かなくなり、硬い表情をして神経質になりはじめました。
できるだけ皆から離れて、隅のほうでじっと座っているマラーク。
私も全然近寄らせず、寝てばかりいるアマールのことを気にする様子も
なくなりました。ダマーニのことと重なって、
陣痛が始まったのを見た時同様、もうクラクラする思いでした。


続く。
by hanamomoact | 2010-09-08 01:17 | サーメル一家


UAEでの生活。家族はガゼル・犬・鳩・馬・猫・ラクダ・牛・山羊・・・+オットの相方さま。


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